先週の日経新聞の記事で気になるものがありました。マイナス金利が却って物価の足を引っ張るという指摘です。
貸出金利が低下すれば企業が積極的に資金を借りて経済が活性化し、結果的に物価が上昇していくというのが金融政策の基本かと思いますが、それを真っ向から否定する主張ですね・・・。
その論拠を引用するとこういった内容です。
マイナス金利が物価の停滞を招くとの見方が出ている。低金利で資金調達のコストが低いと、企業は値上げをしなくても収益を得られる。低収益の事業でも続けられ、過当競争で物価が下がる。
こうした考え方から、利上げがむしろ経済を押し上げるという分析も出てきた。米コロンビア大のマーチン・ウリベ教授は米国の1954年から2018年の経済データを分析。継続すると表明した上で段階的に利上げをすると金利以上に物価が上がり、物価を考慮した実質金利が下がって経済にプラスになるとした。
日本でも早大の小枝淳子准教授が同様の分析をした。日銀が16年9月に政策金利をマイナス0.1%からゼロ%に上げたと仮定すると政策金利よりも物価が上がり、実質金利が下がって景気を押し上げる試算になったという。個人の見解だが、18年11月に公表したのは日銀の金融経済研究所だ。BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は「日銀の議論に影響する可能性は十分ある」と話す。
「低収益の事業でも続けられ、過当競争で物価が下がる。」というのはどうなのでしょうね?日本では銀行がまだ企業を支える力があった90年代がまさにそうした過当競争の時代である一方で、2000年代以降はリストラの結果、企業の合理化が進んだわけですが、どちらも特にインフレになったことはありません。
やはりインフレ理論は供給サイドではなく需要サイドを見ないと本質を見誤る気がしますね。
また、小枝氏の分析はその詳細が不明なのでよく分かりませんが、「日銀が16年9月に政策金利をマイナス0.1%からゼロ%に上げたと仮定すると政策金利よりも物価が上がり、実質金利が下がって景気を押し上げる試算になった」というのも俄かに信じられない気がしますね。原文を探してみましたが見つかりませんでした。
あえて言えば金利上昇によりインフレ期待が高まれば、インフレの動きが顕在化する効果があるかもしれませんが、ただ2016年9月のイールドカーブコントロールによって長期金利はそれまでのマイナス水準からプラス水準に回復しましたが、インフレ率は特に上昇していません。そう考えるとやはり眉唾な気がします。
とは言いつつこうした考え方が日銀の金融政策に影響を及ぼすのかどうかは関心を持ってみておいた方が良さそうです。仮にマイナス金利が終了となれば、住宅ローンの借り換え金利も多少上昇することになります。
ちなみに先日の黒田日銀総裁の記者会見ではこのような発言がありました。
問 欧米では批判の声もあるが、マイナス金利政策の評価は。
答 欧州中央銀行(ECB)を含め、欧州の中銀のほとんどがマイナス金利を維持しており、反対が広がっているとは思わない。一方、米国では強い反対意見もあり、意見が割れている。日本の場合、マイナス金利は適正なイールドカーブをつくるという意味でも有効であり、全体として金融緩和の効果を高めている。マイナス金利が適用されているのは金融機関の当座預金のごく一部で、副作用への配慮も行われている。
今のところ「マイナス金利は有効」というのが日銀の公式見解ということですね。
参考にしてみてください。
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