先日の当サイトのコラムでは、7月末に実施された日銀の金融政策決定会合での政策変更について以下のように予測しました。
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1.長期金利の誘導レンジの拡大
2.長期金利の誘導目標の引き上げ
1は現状「−0.1%〜0.1%」としている長期金利の誘導レンジを例えば「−0.2%〜0.2%」に変更するというものですね。どちらも真ん中は「0%」ですので金融緩和が後退している感じはしませんが、実際には長期金利は「その先」を読んで0.2%に近づくでしょうから、実質的には金利引き上げということになります。
2はもっとストレートに、現状「0%」としている長期金利の誘導目標を「0.1%」などに引き上げるというものですね。こちらの場合は誘導レンジは「0%〜0.2%」と言った形になると思いますが、やはり実際の金利水準は0.2%近辺になるかと思います。
つまり、1も2も結局は実質的に「金利引き上げ」になるということですね。ただインフレ率が下がる中で直接的に「金利を引き上げる」とは言えないと思いますので、やるとすれば1の長期金利の変動の自由度を増やした結果、「たまたま金利が上昇した」という形をとるのでしょうね。
>>>金融政策に変更あり?なし?今後の市場金利と住宅ローン金利を占う
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ここだけを切り取れば、ピタリと当たったことになりますが、実際にはこうも述べておりました。
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実際のところ、このように日銀が金融緩和を見直し、長期金利や住宅ローン金利が上昇してしまう可能性はかなり低いと思います。金利の上昇は基本的にはデフレ要因ですからね。
そうではなく、今の金融緩和は100%続けつつ、インフレ率にネガティブインパクトを与えないよう、ピンポイントで金融機関の経営に配慮した軌道修正を行うのがメインシナリオではないでしょうか?
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つまり当方にとって今回の政策変更は予想外だったと言うことです・・・市場関係者にとっても同じなのではないでしょうか。
今回の会合について予想外のことをもう1つ挙げるとすれば、「誘導レンジの拡大」だけでなく「今後の金融政策の見通し=フォワードガイダンス」が開始されたことも挙げられます。これは今後の金融政策の予定を事前に「約束」することで、政策に対する不透明感を払しょくし、効果を高めようとする狙いですが、では今回のガイダンスはどうなっているかと言うとこうなりました。
・政策金利については、2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している。
従来は「マネタリーベースの拡大」だけに言及していたのに対して、今回は「金利水準にまで踏み込んだ」ということになります。普通に読めば消費税が増税される2019年10月以降、例えば2020年10月くらいまでは少なくとも今の低金利を維持するというわけです。
ということで今回の日銀の政策変更をまとめると金利面においては以下2つでバランスを取ったということですね。
・長期金利の0.2%への金利上昇容認 → 金融緩和後退
・将来的な低金利維持を「約束」 → 金融緩和強化
そしてそれはつまり、住宅ローンの借り換えに対しても同様で、「金利が少し上昇するのはマイナスだけれど、低金利がまだまだ続くと約束されたことはプラス」ということになります。
要するにプラスマイナスゼロということですが、とは言いつつ住宅ローン顧客の素直な反応としては「金利が少しでも上昇するなら今の内に借り換えておこう」と考えるのではないでしょうか?
報道では「8月の住宅ローン金利は早速上昇した」という内容のものが散見されますが、実際には8月の住宅ローン金利はほとんど据え置きとなっており、まだこうした政策変更の影響は出ていません。7月31日の午後に公表されたものが、7月31日の夕方には発表された8月の住宅ローン金利に反映されるはずがありませんね。
とすると「8月中に借り換えてしまおう」という考え方は間違いではありません。
ただそれはあくまで「10年固定」「20年固定」「30年固定」と言った住宅ローンの中でも「固定金利」の話ですね。
住宅ローンの固定金利は長期金利に連動しますので、長期金利が0.2%まで上昇するのであれば間違いなく相応に上昇することになります。
一方、住宅ローンの「変動金利」は短期金利に連動しますので直接的な影響を受けません。
その短期金利については引き続きマイナス水準が維持されていますね。足元の代表的な短期金利である「無担保コールO/N物レート」はこのようになっています。
・−0.071%
やはりマイナスですね。上昇している様子もありません。とすると住宅ローンの変動金利は今月は当然として9月以降も上昇することはなさそうです。借り換えにおいて変動金利を検討されている方は焦る必要はないということですね。
加えて上記の通りフォワードガイダンスによって金利上昇リスクが後退したのだとすると、住宅ローンの変動金利にとって今回の日銀の政策変更の影響は「メリットだけ」という考え方もできそうです。
具体的に住宅ローン金利に「長期金利誘導レンジの拡大」の影響が出てくるのは9月以降かと思いますが、どのように変化するのか注目ですね。
いずれにしても過去最大になっていると言われている住宅ローン変動金利のシェアがさらに拡大するのは間違いなさそうです。参考にしてみてください。
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