今後の住宅ローン借り換え金利の動向を占う上で大切なのは、日銀の金融政策がどう変化していくのかという点です。
日銀はデフレからの脱却、そしてインフレ率2%達成を目指して大規模な金融緩和=異次元緩和を続けていますが、「金融緩和=金利低下」ということですから、この異次元緩和が続く限り住宅ローンの借り換え金利もまた低金利を維持することになります。
となると住宅ローン顧客からすれば「インフレ率が2%に到達せず、金融緩和も低金利も続いていってほしい」わけですが、では直近のインフレ率はいくらかと言うと+0.7%です。念のため過去3年のインフレ率をチェックするとこうなっています。
・2015年:+0.8%
・2016年:−0.1%
・2017年:+0.5%
これらの値を見る限り、インフレ率が2%に到達する兆しは全く見えません。アベノミクスと異次元緩和が始まってからすでに5年以上が経過しているわけですが、それでもインフレ率は低位安定しているわけですから、
・インフレ率は永遠に2%に到達せず、その結果、異次元緩和は永遠に続けられ、住宅ローン借り換え金利も永遠に低位安定する
ことすら期待してしまいますね・・・。さすがにそれは楽観的に過ぎるかもしれませんが、少なくとも現状見渡せる範囲において、住宅ローンの借り換え金利が上昇する可能性はほとんどありません。
ちなみに日銀がなりふり構わずインフレ率上昇を目指すのであれば、更なる金融緩和の拡大が予想されます。実際、本日の長期金利は+0.03%となっており、金融市場も多少はその可能性を織り込んでいるのかもしれませんね。
ただ一方で今朝の日経新聞では「追加緩和観測 火消しへ」として以下のような記事が配信されていました。
・21日の日銀・布野幸利審議委員に続き、7月上旬に原田泰、政井貴子両審議委員が相次いで講演する。足元で伸び悩んでいる物価の動きなどを説明するとみられる。日銀は2%物価目標について「できるだけ早く」から遅々として進まない「牛歩」の状況を市場に伝える必要に迫られている。丁寧に戦略を語り、追加緩和観測の火消しにつなげるもようだ。
要するに日銀は、「早くインフレ目標を達成したいものの、追加緩和はするつもりはない」ということですね。追加緩和=金利低下要因となりますので、それがないとすれば少し残念ですが、ではなぜ更なる金融緩和に日銀が及び腰かと言えば、「副作用」を気にしているからですね。
そのあたりのスタンスを、昨日発表された「金融政策決定会合における主な意見(2018年6月14、15日開催分)」から読み取っていきたいと思います。該当箇所を抜粋していくとこうなります。
・2%の「物価安定の目標」の実現までにはなお距離があることを踏まえると、強力な金融緩和を粘り強く進めていくことが適当である。
・持続可能な形で強力な金融緩和を息長く続けていくべきである。
・経済・金融環境に深刻な歪みが生じることがないよう注意しながら、持続性に十分配慮した政策運営がなされるべきである。
・金融機関では、低収益店舗の減損リスクも生じてきている。金融政策の継続にあたっては、その効果と副作用の二つの時間軸を意識し、副作用が顕在化する前から対応を検討しておくことが必要となる。
強力な金融緩和を継続する必要がある一方で、「持続可能な形」で、「経済・金融環境に深刻な歪みが生じないようにする」ことが確認されたということですね。
そして具体的な「副作用」の例として挙げられているのが、「金融機関の低収益店舗の減損リスク」 です。これはつまり、低金利長期化に伴う金融機関の収益悪化によって、赤字店舗がお荷物になり始めているということです。実際メガバンク各行は、店舗網縮小や人員削減といった積極的なリストラ策を発表しています。
こうした動きは日本経済にとってもちろんマイナスですから、日銀も「副作用への対応策の検討」が必要だと感じているわけですね。
具体的にどんな対応策があるのかは分かりませんが、いずれにしても日銀はガンガン金融緩和を拡大する状況にはないということです。
とは言いつつ、インフレ率が目標に到達する前に金融緩和を縮小して、金利引き上げに動くとも考えられません。金融緩和が縮小すればインフレ率の低下要因となります。
そのように考えると今の日銀は、「金融緩和を縮小することも拡大することもできない板挟み状態にある」と言えそうですね。とすると足元の金融緩和がそのまま続いていくわけですから、住宅ローン借り換え金利もまた足元の金利水準が続いていくことになります。
日銀関係者の方には申し訳ないですが、こうした状況は住宅ローン顧客からすれば「悪くない」ですね。1日も長く低金利が継続していくことを期待したいと思います。
参考にしてみてください。
>>>住宅ローン借り換え比較クチコミランキング・トップページはこちら