たまたまネットを見ていたら住宅ローンの借り換え金利について、2人のFPの方が異口同音に10年固定金利を勧めているコラムを見かけました。10年固定金利が決して悪いわけではないと思いますが、ただ一般的に最も金利が低いのは変動金利であり、さらに実際の金利タイプのシェアでも変動金利が一番人気ですね。
そうした中であえて10年固定金利を勧めるには確固たる理由があるはずですが、それぞれチェックしてみるとまず1本目のコラムではこのような論拠になっています。
・金利のピーク圏という時期(高金利)であれば、その後の金利低下で適用金利が下がることが期待できる「変動金利ローン」が有利。逆に、金利のボトム圏という時期(低金利)は、世の中の金利が上がっても低い金利で借り続けられる「固定金利ローン」が有利です。判断が難しい情勢であれば、「10年固定金利選択型ローン」にし、将来見直しを検討するのが無難でしょう。現在の情勢はというと、これ以上の下げ余地はほとんどないという水準の金利ボトム圏。変動金利ローンという選択肢はないと考えるのがセオリーです。
・「当面は金利上昇がなさそうだから変動金利で借りておき、上がりそうになったら固定金利に乗り換えればいい」と考える人も多いのですが、実際には難しいと思われます。長期金利は短期金利より先行して上昇します。つまり、長期の固定金利ローンの金利が変動金利ローンより先に高くなってしまうわけですが、消費者心理からすると、今までより高くなったものにわざわざ乗り換えることには抵抗が生じるはずです。そうこうするうちに変動金利ローンも上がってきますが、固定金利ローンはさらに上がり、ますます乗り換えにくくなるでしょう。
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まず1つ目の「現在の情勢はというと、これ以上の下げ余地はほとんどないという水準の金利ボトム圏。変動金利ローンという選択肢はないと考えるのがセオリー。」という点ですが、そんなセオリー聞いたことがありません。なぜなら確かに現状は金利のボトム圏ですが、今後の金利動向としては「いつか上昇する」という考え方もある一方で、「かなりの長期間低いまま」という考え方もあるからですね。もし仮に後者の考え方を支持するなら「変動金利ローンを選ぶのがセオリー」ということになります。
日本の市場金利はバブルが崩壊した90年代以降ずっと低金利が続いています。つまりこの30年間まともな金利上昇は一度もなかったのですね!
現在も含めてこの30年間で最も正しかった選択肢は「変動金利ローン」だったわけですから、その事実はもっと素直に受け入れるべきなのではないかと思います。
2つ目の「上がりそうになったら固定金利に乗り換えればいいと考える人も多いのですが、実際には難しい」というのはいかがでしょう?
一般論から言えば必ずしも間違いとは言えませんが、ただ現在は日銀が金利水準をコントロールしている状況ですからね。仮に金利上昇に踏み切る場合は事前に入念なアナウンスがあるものと思われます。ポジティブな金融政策はサプライズでも構いませんが、金利引き上げのようなネガティブな金融政策は「事前案内」があるのは間違いありません。
とするとそうした「事前案内」があった時点で、固定金利に借り換えるのかどうかじっくり検討すればよいということになります。
2本目のコラムではこのような論拠になっています。
・金利落下局面では変動金利型が有利になりますが、これから金利が上昇するかもしれないというときには固定金利型のほうが有利になります。
・変動で借りて、金利が上がってきたら固定に切り替えればいいのではという意見もよく聞きます。ですが、景気動向が金利に反映されるのは固定金利のほうが早いのです。金利が上がってきたのでは?と思ってから切り替えても、すでに固定金利が上がっている可能性もあるので注意が必要です。金利が低い時期に、最初から10年以上の長期の固定金利選択型にしておけば安心です。
・2007年末から2009年ごろにアメリカでサブプライム住宅ローン危機が起こりました。この危機は金利が上昇し、住宅価格が下落を始めたことが発端でした。金利が上昇した結果、負担が大きくなり、返済が滞る家庭が増えました。住宅価格が下落した際に、多額のローンが残っているとローンの借り換えも厳しくなります。サブプライム住宅ローン危機は今や一昔前のことなので、知らない人や忘れてしまった人もいるかもしれませんが、他人事ではありません。歴史からしっかりと学ぶようにしたいですね。
・全期間固定金利型に抵抗がある場合は、10年固定金利などにするのも一つの手です。借入額の大きい10年間、固定金利にしておけば仮に市場金利が上がってしまった場合でもその期間は返済額が変わらないからです。10年の間に一生懸命返して住宅ローンを小さくしてしまえば、借り換えのときにたとえ金利が上がったとしてもそれほど怖くはなくなります。
>>>変動金利で借り過ぎた!?住宅ローン“低金利時代”の注意点 賢い住まいのマネー術
1つ目と2つ目の点は上記で指摘した事項と被りますので割愛させていただいて、3つ目のサブプライム住宅ローン危機は金利上昇が問題だったのではなく、「住宅価格の上昇を当て込んで無茶な借り入れが横行していた」という信用問題だったと思います。例えば「当初5年間は住宅ローンの元本返済がなく、5年後の元本返済のタイミングで売却しようと思っていたら住宅価格が大きく下がって売れなくなくなってしまった」といったケースです。
実際、その後の金融緩和でアメリカの金利も史上最低水準まで下がりましたから、もし金利水準が問題ならその時点で解決されたはずですね。
ちなみに「住宅価格が下落した際に、多額のローンが残っているとローンの借り換えも厳しくなります」という点ですが、一般的には借り換えの場合の融資率は200%以上ありますので、住宅の担保価値が住宅ローン残高の半分以下などにならない限りは借り換えは可能です。
4つ目の「10年の間に一生懸命返して住宅ローンを小さくしてしまえば、借り換えのときにたとえ金利が上がったとしてもそれほど怖くはなくなります。」
というのはいかがでしょう?こちらも間違いとは言えませんが、同じことが変動金利にも言えそうですよね。つまり「低金利の間に一生懸命返して住宅ローンを小さくしてしまえば、借り換えのときにたとえ金利が上がったとしてもそれほど怖くはなくなります。」という事です。
そうしたわけで、一般論として金利上昇リスクが相対的に少ない「10年固定金利が無難」という考え方は分かりますが、現状の金融環境を考えるといきなり住宅ローン金利が上昇する可能性は考えにくく、その点では変動金利も十分有効な選択肢になってくると思います。
住宅ローン変動金利のベースとなる短期金利を日銀がそう簡単に引き上げるとは思えませんしね。
参考にしてみてください。
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