さてネットを検索していると、「2020年に長期金利3.4%の試算」という記事を見かけました。2020年と言うとあと2年とちょっとですが、もし本当に長期金利が3.4%まで上昇するのであれば衝撃ですね!
現状の長期金利は約0.1%ですから、実に約3.3%も上昇することになります。もしそうなれば住宅ローンの借り換え金利も相応に影響を受けることになります。
ただ常識的に考えればそんな短期間で金利が上昇してしまうことはないでしょう。分かりやすくこれまでの長期金利の推移と重ね合わせるとこうなります(2000年から)。
どう考えてもあり得ないですね・・・。特に今は日銀のイールドカーブコントロールによって長期金利は「上限0.1%」となるよう上値を抑えられている状態ですので尚更です。
ではなぜそのように、「2020年に長期金利3.4%」という話が出てきたかと言えば・・記事によれば「内閣府が昨年7月に出した中長期の経済財政に関する試算」に掲載されていたそうです。と言うわけで早速チェックすると長期金利についてこのような予測となっておりました。
・2017年:0.8%
・2018年:1.7%
・2019年:2.7%
・2020年:3.4%
・2021年:3.8%
・2022年:4.1%
・2023年:4.2%
・2024年:4.4%
何かの冗談ではないかと思うくらい常識外れの数字が並んでいるわけですが、もちろん内閣府が冗談でこうした数字を出すはずもなく、その理由は2つではないかと思います。まず1つ目は、日銀が示すように「あと2年くらいでインフレ率は2%に達する」という言葉を「信じれば」、こうした数字になってしまうということですね。
もちろん内閣府としてもそのようにインフレ率が上昇してほしいと思っているのだと思いますが、たださすがにこれまでの経緯や足元の金利環境を見渡せば、現実離れした予測であることは分かりきっているわけで、2つ目の理由となりますが、実はこの予測は「経済再生ケース」ということで「日本経済がものすごく順調に回復した時」という注釈付きなのですね。
ではそうでない、もっと現実的な予想はと言うと「ベースラインケース」としてこうなっています。
・2017年:0.8%
・2018年:1.1%
・2019年:1.2%
・2020年:1.5%
・2021年:1.6%
・2022年:1.7%
・2023年:1.8%
・2024年:1.9%
2000年以降の長期金利の最高値が約2%であることを考えれば、こちらはまだ可能性はありますね。それでもかなり強気ではありますが・・・。
さらに住宅ローン顧客として安心して良い理由が2つあります。1つ目は上記の通り、今やイールドカーブコントロールによって長期金利は上限0.1%で抑えられていますので、インフレ率が2%を安定的に超えない限り、金利は上昇することはない、ということですね。ではこの昨年7月の試算における「ベースラインケース」でのインフレ率の予測はと言うとこうなっています。
・2017年:1.4%
・2018年:1.2%
・2019年:1.7%
・2020年:1.7%
・2021年:1.2%
・2022年:1.2%
・2023年:1.2%
・2024年:1.2%
つまりずっと2%を超えないわけで、であれば長期金利はずっと「0.1%以下」ということになりますね。
安心して良い2つ目の理由は、この穏当な「ベースラインケース」ですら実は下方修正されているということです。なぜ元記事で「昨年7月」の数字を持ち出してきたのかは分かりませんが、この試算は半年に1回発表されていますので、すでにその後2回更新されているわけですね。というわけで2017年7月に発表された試算を見ると、「ベースラインケース」での長期金利の見通しはこのように変化しています。
・2017年:0.8% → 0.1%
・2018年:1.1% → 0.1%
・2019年:1.2% → 0.5%
・2020年:1.5% → 0.9%
・2021年:1.6% → 1.3%
・2022年:1.7% → 1.5%
・2023年:1.8% → 1.6%
・2024年:1.9% → 1.7%
2020年の金利見通しは3.4%どころか0.9%ということですね!
ちなみにインフレ率はと言うとこうです。
・2017年:1.4% → 1.1%
・2018年:1.2% → 1.3%
・2019年:1.7% → 1.8%
・2020年:1.7% → 1.8%
・2021年:1.2% → 1.1%
・2022年:1.2% → 1.1%
・2023年:1.2% → 1.1%
・2024年:1.2% → 1.1%
んん?当然と言えば当然かもしれませんが、インフレ率は全体的には昨年の予想よりさらに下がっていることが分かります。つまり、やっぱり2%を超えてこないわけで、とすると常識的に考えればイールドカーブコントロールによって長期金利は「0.1%以下」で推移するはずですね。
つまり内閣府のこの見通しは「インフレ率は2%に到達しないけれど、イールドカーブコントロールは徐々に縮小されていくよ」と言っているわけで、日銀の見解とは全く異なります。
どちらが正しいかと言えばもちろん日銀の方ですね。なぜならこの金利操作は、政府から独立した中央銀行である日銀自身が行っているからです。とすると上記インフレ率の予測が正しいのだとすれば長期金利の見通しはこうなるはずです。
・2017年:0.1%以下
・2018年:0.1%以下
・2019年:0.1%以下
・2020年:0.1%以下
・2021年:0.1%以下
・2022年:0.1%以下
・2023年:0.1%以下
・2024年:0.1%以下
簡単でいいですね・・・。
そうしたわけで、現時点では2020年以降も住宅ローンの借り換え金利が上昇する可能性はない、というのが結論ですね。
こうした見通しが変わるとすれば
1.インフレ率が上昇し、2%を超えた時。
2.日銀の金融政策が根本から変わった時。
ですが、どちらもいきなり状況が一変するということはありませんので、過度な心配は不要かと思います。
何かこうした今後の住宅ローン借り換え金利見通しが変わる事態となれば、当方も積極的にご案内していこうと思いますので、定期的にこちらのニュースをチェックしていただければ幸いです。
参考にしてみてください。
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