住宅ローンの借り換えに関してよく言われる「原則」が、借り換えでメリットを出すためには以下3つが目安になる、というものです。
・残りの残高1,000万円以上
・残りの期間10年以上
・借り換えによる金利低下幅1%以上
金利が0.01%でも下がれば得する気もしますが、実際には借り換えには概ね30万円〜60万円の諸費用がかかりますので、その金額以上の借り換えメリットがないと「費用倒れ」=損してしまうということですね。
実際、上記目安から算出される借り換えメリットは1,000万円×10年×1%÷2=50万円となり、確かに「30万円〜60万円の諸費用」をカバーしなければいけないという前提条件に見合う目安と言えます。
ただし。
素直にこの目安に従うとネックとなるのが3つ目の「金利低下幅1%以上」という項目ですね。すでに低金利が始まって20年以上となりますし、「異次元緩和」が始まって4年以上です。とすると当初の金利がすでにそれなりに低く、仮に借り換えで金利を下げられたとしても「1%未満」となってしまう可能性が十分あります。
では金利低下幅が1%未満だと本当に「費用倒れ」=損してしまうということになるのでしょうか?
もちろんそんなことはありません。上記の通り借り換えメリットはざっくり以下のように計算できます。
・残りの残高×残りの期間×金利低下幅÷2
つまり、仮に金利低下幅が1%未満でも、残りの残高や残りの期間が十分あれば、得する可能性が高いということですね。たとえば残高が2,000万円、残りの期間が20年とすると、金利低下幅が0.5%でも借り換えメリットはこのようになります。
・2,000万円×20年×0.5%÷2=100万円
むしろ「1,000万円×10年×1%÷2」のケースよりメリットは多くなるのですね。
では具体的に最近借り換えをされている方はどれくらい金利が下がっているのでしょうか?これまたいつものように、住宅金融支援機構が発表した「民間住宅ローン借換の実態調査」の結果をチェックしてみたいと思います。
今回の調査は最新のもので、2016年4月から2017年3月までに借り換えた1,360名が回答者ということです。人数も十分ですし、データも新しいですね。ではその気になる結果はこうなっています。
ざっくり分類するとこうなります。
・金利低下幅が1%以上 : 32.5%
・金利低下幅が1%未満 : 60.5%
・金利変化なし : 2.4%
・金利はむしろ上昇 : 4.5%
なぜ金利が変わらなかったり、むしろ上昇している人がいるのか理解に苦しみますが、それはともかくとして冒頭の「原則」通り金利を1%以上引き下げられた人は約3割とむしろ少数派ですね!
多数派は約6割となっている「金利低下幅1%未満」の方々です。逆に言えばこれこそ「金利低下幅が1%未満でも借り換えでメリットが出る」ということを明確に示しています。わざわざ損をするのに借り換えをする人はいませんからね。
では具体的に借り換えにより金利低下はどれくらいということになるのでしょうか。人数的にちょうど真ん中の「中央値」はおそらく「−0.6%」あたりにありそうですが、一応計算してみたいと思います。
「金利上昇」「変化なし」は除外し、「〜0.2%低下」=−0.1%、「〜0.5%低下」=−0.35%、「〜1.0%低下」=−0.75%、「〜2.0%低下」=−1.5%、「2.0%超低下」=−2.5%と置いてやると、その加重平均は「−0.92%」ということになります。
つまり、借り換えによる金利低下幅は平均約−0.9%ということですが、上記グラフから感じる実感よりもやや高めですね!
「お金」に関する調査もそうですがこうした「金利」に関する調査も、下限は決まっている一方、上限はありませんので「平均値」を出すと高めに出てしまう、ということなのでしょう。
というわけで話を戻して「中央値」をもう少し精緻に計算してみたいと思います。ちょうど50番目(51番目)の人がどこにいるかということですね。
「0.5%〜1.0%低下」ゾーンの始まりが38.8%(約39番目)で、終わりが67.4%(約67番目)ということになります。で、真ん中である50番目・51番目がどこにあるかを計算していくわけですが、この人たちが均等に分布しているとすると、50番目は約0.706%、51番目は約0.724%ということになります。その平均値は約「0.72%」ということですね。
ざっくりとした計算ではありますが、「−0.9%」という金利低下幅よりは現実感があります。そうしたわけで、住宅ローンの借り換えにおける金利低下の目途は約「−0.72%」と結論づけたいと思います。
ただしもちろんこれは、「金利が0.72%以上下がらないと借り換えでメリットが出ない」という意味ではありませんのでご注意ください。実際のところ金利低下幅が「0.2%以下」や「0.5%以下」という方もたくさんおられるわけですからね。
参考にしてみてください。
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